10月29日、私のPF占有率4位のマンダムの決算があった。概略は以下の通りである。
マンダム、7-9月期(2Q)経常は黒字浮上 マンダム <4917> が10月29日大引け後(15:00)に決算を発表。22年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結経常損益は3.5億円の赤字(前年同期は12億円の黒字)に転落した。
直近3ヵ月の実績である7-9月期(2Q)の連結経常損益は2.4億円の黒字(前年同期は1.9億円の赤字)に浮上し、売上営業損益率は前年同期の-1.3%→0.7%に改善した。
【業績予想/決算速報】マンダム<4917>が10月29日に発表した2022年3月期中間決算の経常損益は-358百万円、直近のIFISコンセンサス(-1,300百万円)を72.5%上回る水準だった。また同日発表された業績予想によると通期の経常損益は前回予想を据え置き、300百万円を予想、IFISコンセンサスを3.8%下回る水準となっている。
マンダムはここ最近、悪決算で暴落がもはや様式美となっていたため、今回もかなり警戒していたが意外にも2Q単体では黒字浮上となった。1Qの短信と見比べると、1Q単体に比べ2Q単体は売り上げは若干伸び、原価率はわずかに下落したものの、結局販管費等が下がっていることで黒字確保したようだ。

四半期ベースで見れば実に昨年の1Q以来の営業黒字復活である。とはいえ、元々4四半期連続の赤字という酷い業績を見ているから「よくやった」ように錯覚するが、コーセーも資生堂も減益幅は酷いものの営業赤字は一切出していないことを考えると、やっとスタートラインに立ったに過ぎない。もっとも、あちらと比べてバリュエーションが例えばPBRで見れば3分の1や6分の1なので、比較するのは酷ではあるが。

マンダムの業績悪化はコロナによる減収はもちろん大きいが、それに加え最近新工場を作ったことで減価償却費が増えて原価率をかなり押し上げている(上図)。今期はそのピークのようだから今後は改善が見込まれる(上図)。

今年から会計基準が変わり、マンダム含め多くの企業で売り上げが減る代わりに販管費が下がっているのでややこしいが、それを差し引いても販管費の削減には力を入れているようだ。下図をみてもよくわかる。

一方で、主力のギャツビーが不調なのは気がかりである。市場平均を大きく下回ると会社が認めているが、実際店頭で見ても花王や資生堂のメンズ向けアイテムが幅を利かせているのを感じる。超レッドオーシャンでなおかつコロナにより各社とも厳しい状況の女性用化粧品大手がニッチな分野であるメンズ向けにも進出してくるのは当然であり、しかも相手のほうがはるかに企業規模が大きくブランド力もある。
コロナによる業界全体への逆風と、原価償却費による利益圧迫はいずれ解消されるのでそこまで問題とは思わないが、むしろ問題はこのメンズ向けの競争激化にあると言える。コロナが過ぎれば競合がニッチなメンズ向けから手を引くだろうか?そもそも国内市場は人口減少により少ないパイの取り合いであることを考えると、あまりそうは思えないのだが。

インドネシアは相変わらず赤字だがやや縮小、その他海外はやや減益ながら一貫して黒字をキープしている。長期的にはアジア諸国に進出を拡大するしかここの生き残る道はないだろうし、あまり利益を出せていないもののアジア事業に注力しているのはそこまで悪手とは思わない。
とはいえコロナ前でも依然利益の多くは日本市場頼みであるから、日本のコロナ騒動が収まらない限り本格的な復活は難しい。
財務は株主資本はほぼ変わらず、自己資本比率は短期借入金を返済したことでやや上昇の75%ということで全く問題はない。政策保有株の売却で最終益を黒字化しているが、まだまだ政策保有株はあり、今後も売却の可能性はある。
バリュエーションは冒頭にも書いたが例えばコーセーの3分の1ほどのPBR、1.16である。激安とは言わないがセクター的にはかなり安いと言えるし、この水準であればとりあえず大赤字をださずBPSが減らなければまあ我慢できるレベルだろう。
コンセンサスを大きく上回る結果であったので、また株価自体日経の急騰にも全く付き合わず底這いしてきたことから出尽くしで下がるような位置とも思えないが、ここ最近は意外と底堅い印象があったのである程度は予想されていたのかもしれない。
ただ、「営業利益・経常利益については、販売費及び一般管理費の抑制や費用発生の遅れにより、公表値を上回る結果」と第 2 四半期業績予想と実績との差異のお知らせ の中にある。通期修正はなかったので、「費用発生」が3Q以降になるならば3Qや4Qは凡庸な結果に終わる可能性も。元々コロナ以外の競争激化の要素もあるし、単純に過去の高値を見て3000円や4000円に戻ると言うのは甘すぎると思う。月足は2200-1500のレンジを示唆しているので、その範囲で上限近づけば売り、下限近づけば買いだろう。月足-2σの1400台への転落は、少なくとも今回の決算ではなさそうに見えるが、ヒストリカルPBR(過去10年)の最安はPBR0.95で1360円程度となる。普通万年黒字からの赤字転落ならこれを割ってきてもおかしくないことを考えると、あり得ないレベルではないことだけは念のため…。