グロースとバリューの二極分化は最大レベルにまで達しつつある中、アフターコロナ株についても実は二極分化が進んでいる。今日は金曜の欧州コロナ再拡大をきっかけとし、アフターコロナ株に弱いものが多くみられているが、その中でも月足レベルで見るとその株価位置には大きな開きがある。
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上図は今日も良く下げている陸運・私鉄セクターの京阪HDである。(出典はhttps://irbank.net/ 及び https://kabutan.jp/ 以下同)
月足レベルで見ても相当に下げており、PBR面でも過去最低レベルに達しつつあるのが分かる。
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続いて、上図はJR東日本。JR系は私鉄に比べれば株価を保っている方だが、それでも月足MAを割り込んでおり、PBRも過去10年で低位に沈んでいる。
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上図はアフコロ株の代表格、エイチアイエス。株価は月足をやや割り込んでいるが踏ん張りどころといった様相で、まだ完全には崩れていない。株価の絶対値としてはコロナ前の高値にはまだまだ距離があるように見えるが、巨額の赤字で毀損したBPSによりPBR面では一時過去最高レベルになっている。つまり、実質的にはコロナ前以上に買われているといってよい。
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上図ラウンドワンも株価の絶対値としてもPBR面でも過去最高に近い買われ方をしており、しかもいまだに月足は崩れていない。
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上図は外食の優良株サイゼリヤだが、月足レベルではご覧の通り。コロナとは何だったのかというレベルである。アフコロ株はどこも今年の2月、6月、そして9月~10月初あたりにピークがあったが、ここはそのたびに上値を切り上げてきている最も強い形である。
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最後に、上図はアパレルのアダストリア。アフコロピークに合わせて上昇するも月足で見ればレンジ内に留まり、明らかに旅行や外食に比べて弱い。PBR的にも過去比較で中位~低位のままである。
さて、ここまで見てきたが、アフターコロナ株については以下のような傾向がみられる
・昨年のコロナ初期に強く売り込まれたアフターコロナど真ん中銘柄(=旅行、外食、娯楽など巨額赤字を出したところ)ほど強く、PBR面ではコロナ前以上に買われているものも多い
・そういった銘柄は大抵信用倍率が低く、単純に業績期待だけでなく需給面で上がっている面が大きいと思われる
・アフターコロナセクターの中で相対的に弱いのは陸運、アパレル等であり、特に私鉄は今年に入り底を掘る動きが続いているが、一方で私鉄は昨年のコロナ初期に大して下げていなかったという面があり、遅れて調整が来ているとも考えられる。また株価下落を受けて信用買いが大変多くなっており、これが下げに拍車をかけているとも見える。
ファンダメンタルズ的には、「勝ち組」のアフコロ株はもはや魅力は皆無である。既にPBR面で過去最高レベルに買われている一方、コロナの感染状況は足元落ち着いてはいるものの冬を控え今後の見通しはまだ不透明である。さらに言えばたとえコロナが収まっても特に海外旅行などが正常化するのは相当先に見える。現状の「勝ち組」アフターコロナ株はいわばテストで0点、いやマイナスだった生徒が10点か20点をとっただけで表彰されているような状況であり、その対極にあるのがコロナ恩恵銘柄やディフェンシブ系である。あちらは120点が90点になっただけで叩き売られている。いくら株価は先を見るものとは言っても、巨額赤字によるBPSの毀損をすっかりなかったことにしているかのような「勝ち組」アフコロ株の上昇は、半導体バブルに次ぐ「アフコロバブル」といっても良いのではないだろうか。
一方、陸運、アパレル、そしてあまりアフターコロナ枠として捉えられないが化粧品などはそこそこ安値放置されているところが多い。「バリュー投資家」としてはせいぜいそのあたりを拾う程度しかないと見えるが、実際問題この足元の感染状況が落ち着いている中で売り込まれている銘柄はいざコロナ第6波となったときに「勝ち組」アフコロの下げに付き合わずに済むのかという疑問は残る。
いずれにせよ、どこもかしこも二極分化が進み一部の銘柄だけで相場を回しているような状況である。何度も書いているが上昇相場の初期ならば出遅れを買っておけばいずれ上がるというものだが今はもはやその逆であるように見えるので出遅れの負け組を買っても報われない可能性も高い。それでも買う場合は十分な買い下がり幅を想定した計画性が必要だろう。
一つ注目すべきは私鉄セクターの下げが特に激しく月足で見てもかつての外食や旅行が大底を付けた時のようなレベルの下げになっており、こういう月足レベルでの強烈な下げについては後々指数などに反したリバウンドが見られる場合があるが、今後に注目といったところだろうか。ただし、ファンダメンタルズ面では依然各社ともさほど割安ではないどころかむしろ割高であるので、その点には注意が必要だと思う。