私のPFも半分くらいが食品株だが、この食品株について今一度検討してみたいと思う。
元々食品株はコロナ初期には相対的にディフェンシブ、巣ごもり需要で買われたものの早々にピークは過ぎ、そこから指数に反比例するようにズルズルと下げ続けてきた。そして今年の6月初めあたりに年安まで売り込まれるものが多かった後、じわじわと反発してきていたが、足元このセクターの売りが再加速しており、最近の年安更新銘柄を見てもまた食品株が多くみられるようになった。
8月に発表された1Q決算は相対的に好決算の食品株が多かったので、特に8月後半は地合いの改善とともにかなり強い時期もあったのだが、今月の2Q決算では原材料コスト上昇による業績失速もあってかなりの急落を見せているところが多い。
基本的に、食品株は一部海外売り上げはあるもののメインは未だに内需であり、原材料は海外からの輸入も多いため円高・資源安メリット銘柄である。
そう考えると足元は円安・資源高なので完全にアゲインストな状況であることは事実である。
更に、海外ではインフレがもはや常識化しており値上げが受け入れられやすいが国内は未だにデフレマインドの為値上げをどんどん行えるかと言われれば厳しい。既に10月から明治や雪印などがマーガリンなどの値上げをしているが、原材料高を吸収できるレベルではないことは以前の決算所感でも書いた通りだ。
さて、食品株はリーマンショック後の月足チャートを見るとどこも似たようなチャートになっていることに気づく。
大体2014~2016年辺りに急騰しており、数倍まで株価が上がったところも珍しくない。
【2206】の株価チャート|日足・分足・週足・月足・年足|株探(かぶたん)-kabutan.jp_.png)
上図はグリコのチャートだが、明治や森永も似たようなチャートである。いったいなぜこのように2014~2016年辺りに株価が急騰したのか。理由は業績が大きく改善したからである。

こちらも例としてグリコを挙げるが、上図はグリコのEPSの推移。(出典:https://irbank.net/E00373/valuation#c_EPS)
これを見れば一目瞭然だろう。他社も同様になっている。
ではなぜこの時期に業績が大きく改善したのか。
元々食品株は内需オンリーの地味なセクターとして、将来性はないとして割安放置されていた。実際、ROEなども非常に低く、極めて薄利多売であり、更に人口減に向かう日本で内需オンリーとなれば、成長期待はゼロに等しい。
そしてリーマンショック後、原材料が高騰し更に利益率が悪化したため、各社とも底を這うような株価推移となった。


先物価格チャート|CME・シカゴ-www.pwalker.jp_.png)
上図3つは、穀物系の価格推移であるが、どれも2013年ごろまで非常に高い水準であったことが分かる。
これを受けて各社ともに値上げを進めていくことになるのだが、その中で原材料価格は下落に転じているのが分かる。加えて、2016年辺りでは円高が進み、これもコストダウンに寄与している。
他にも、
・各社ともこの辺りから海外進出を積極化させたこと
・プロダクトミックスの改善で利益率を上げ始めたこと
などが利益の増大につながったと言われている。
また、市場の評価としても
・TPP恩恵の思惑
・2015年辺りからは新興国などの景気懸念により外需より内需が選好された
・2016年は相場全体が調整局面でディフェンシブに資金が流れた
等の要素で評価が高まり、この2016年辺りに食品株は総じてバブル状態となりPERも30台や40台が当たり前になった。
一方、それ以降は再度世界景気の回復とともに輸出関連などに資金が流れ、食品株の割高性も意識されたのか月足レベルでは足元に至るまで一貫して下げ続けているという状態だ。
各社の利益動向を見ても、やはり2016年辺りがROE等で見ても最高で、そこから緩やかに下落、といったものが多い。足元でもそれなりに踏ん張ってはいるものの、少なくとも右肩上がりを維持、というのには程遠い。まあ、そういう意味では月足チャートのなだらかな下落基調は分からなくもない。
さて、足元食品株のバリュエーションはどうかといえば、月足でこれだけ下げ続けてきたものの大手のPBRは殆ど1を超えているところが多くPERも15倍台前後が多い。正直なところ、ファンダ的に激安といえるレベルのものは少なく雪印メグのPER11.1倍・PBR0.69くらいだろうか。あとは永谷園、そしてPBR面だけではグリコ(ただしPERはまだ20近くある)くらいか。
今はシクリカルの不人気株ではPER1桁、PBRも0.5などザラにあり、それから思うと割高に見えるかもしれないが食品株は景気敏感株と異なりEPSが比較的安定しており、一気に赤字になったりすることがほとんどないことは考慮すべきだろう。従って食品株、特に大手食品株においてミックス係数で1桁になるのならそれは相当に割安といえると思う。(ただし特別利益など一過性の要因で低PERになっているところは除外)
外部環境的に最悪の状態ともいえる食品株であるが、逆から言えばたとえばコモディティが下げに転じてくれば状況は変わってくる。先の穀物チャートを見てもそろそろ天井でもおかしくない水準ではあることは事実だ。一方、世界的に緩和中毒からの脱却はまだまだ見込めず、もう一段のインフレも十二分に可能性がある。
食品株のバリュエーション的にもまだ下げ余地はあると思えるので、今の段階で全力買いなどは到底できるレベルではないが、しかしおそらくこれから各社値上げ、その中でコモディティやドル円の下落、という流れになれば、前回の食品株バブルの再来も相応に可能性はあるのではないだろうか。
とりわけインフレの高進により民衆からの圧力で利上げ→コロナバブル崩壊となれば世界景気の冷え込みは間違いなく、そういった環境ではディフェンシブへの資金流入も合理性がある。
セクターごと長年売り込まれてきたところは食品と不動産位であり、今すぐの反転は難しいにしても今後数年以内の再噴火に期待したい。
最後に、前回の食品バブル時の参考になりそうな記事を2つ
「セクターアナリストの視点」~よくわかる食品株~ (daiwatv.jp)
食品各社、値上げの恩恵 明治HDと森永は営業利益率5%達成へ :日本経済新聞 (nikkei.com)