続・インフレ狂騒曲

米株は1月末から反発を続け、日米指数ともに移動平均を超えてきたあたりでかなり楽観論が台頭してきたが、週後半に大きく値を下げる展開となった。

CPIの予想以上の上昇と、ウクライナ情勢という2つの要因が語られているが、内実、後者はそれが原油価格はじめコモディティへの上昇圧力となっておりそこが本質にも見える。

FRBメンバーのタカ派発言もあって米10年利回りは(ようやく)2%にタッチしたものの、金曜はリスクオフの債券買いで反落している。

実質金利も下図の通り-0.5は超えてきたものの、あと一歩が近くて遠い。

10年-2年については上図の通りかなりフラットニングが進んでいる。前から言い続けているが昨年の同時期のバリュー株相場のそれとは全く違う。にもかかわらず金融株始めシクリカルバリューは買われている。遅行指標である3Q決算、3月配当権利、依然マイナス圏の実質金利、この辺りが要因なのかは分からないが、今から近寄るのはリスクが大きく感じられる。

今年中にも逆イールドに達するのではないかという意見や、逆イールドに達してからも半年~1,2年は大丈夫などという理論などが交錯している。私としては2019の逆イールドがコロナショックの下髭一本で禊を済ませたというのがそもそもおかしな話だと思っているのだが。

さて、CPIである。CPIについてはいくつも指標があるが、今回は価格が動きやすいモノを集めた指標「柔軟(弾力)価格」とその逆「粘着価格」を見てみる。

 

上が「柔軟」、下が「粘着」であるが、既に前者は70-80年代を凌ぐ勢いとなっている。一方後者はまだそこまでではない。なお10年、5年BEIも高止まりといったところで一段上には至っていない。

このインフレがどの程度持続性があるのか、既にパウエルは一時的との主張を取り下げてはいるものの、逆説的ではあるが、中銀が本気で引き締めに向かうつもりであるなら一時的に終わる可能性が再浮上する。供給制約はさておき、資源高にかかる投機資金の剥落は引き締めが十分ワークするからだ。そしてこれ以上のインフレが持続するとなればまず政治的にそれは受け入れられないと考えるのが自然だろう。

コモディティの価格については実需+投機資金によるかさ上げ(あるいはその逆)が構成要素である。

現在のコモディティ高が実需と投機のどちらの要因が強いのかは、判断が難しい。

例えば、昨今原油が100ドルを射程圏内に見据え、リーマンショック前の原油、商品高騰期と重ねる向きも多くなってきている。

当時、リーマンショック前の解説を見ると実需主導的な解説が多く見られた(例えばこちらなど)。

一方、リーマンショック後の研究や解説では、実際には相当の投機資金の流入があったことが指摘されている。

まあ、こんなもんであろう。ショック後には建玉規制などもなされたようだが、どの程度の効果があったのかは正直よくわからない。

今回も異次元の緩和による投機資金の流入が想起されようが、一方で足元の商品高については既に昨年年央で投機マネーは資金を引き揚げているという指摘もある。

この指摘自体どう解釈するかも意見の分かれるところだろう。実需によるスーパーサイクルと読むか、実需だから長続きするかというとそれも疑問だ。リオープン混乱の一過性特需と見ることもできる。投機筋が撤退したのもそう判断してのことかもしれない。

EVによる銅需要や、ESGやSDSs(笑)による化石燃料投資の衰退など、構造的な実需面での需給の引き締まりを指摘する声はもちろん理解できるものの、普通に考えて異次元のバラマキがコモディティに流れ込んでいないわけがなく、00年代半ば以降株式はじめリスク資産とコモディティの価格相関が強くなっているという指摘に見られるように、やはり投機資金の流入を無視することはできないだろうし中銀の引き締めもこの部分の剥落を狙ったものと考えることが自然だろう。

実需主導という解説に違和感があるのは、かつてのように実際に新興国に勢いがあった時代なら分かるのだが、足元中国経済も鈍化傾向でリオープンが一巡したときに各需要が一段上に行く理由がそもそもあるのかという根本的な点にある。また、過度なコモディティ高はそれ自体が増産を刺激したり逆に景気のストッパーとなるため、それ自身の重みで下がりやすくなる。足元の歴史的なコモディティ価格水準を見て、今からコモディティや資源関連株を買おうという気には、少なくとも私はならない。

ただ今までの議論の中で全くスルーしてきた観点が一つだけあり、それはコモディティの需給ではなくそもそもの通貨価値が維持できるのかという点である。この点を考えると少なくとも名目価格としてコモディティ高が続く合理性は一定あるのは事実であるが、今のところこの点についてはほとんど言及されないのはやや不可思議だ。

思えば今年は原油の需給は緩むと昨年言われていた記憶があるが、なんだか一昨年に2桁円高間違いなしのような論調だったパターンとダブらなくもない。

高名な学者やアナリストが頭フル回転で考えても当たらないのだから、私のようなずぶの素人はサイコロでも振っておいたほうがマシだろう。

 

 

 

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