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日経はアベノミクス以後の「緩和時代」における中規模調整が射程圏内に入りつつある。
ここでいう中規模調整とは、日経PBR1程度、月足RSI40割れレベルの調整であり、緩和時代における調整の一つの目安になってきたものである。
上図日経月足チャートを見ると、2016年、2018年末、2019年夏の3度の調整がそれに該当する。
かねてツイートでも言及した通り、この水準の調整を経ないで一段高になったパターンは2014年しかない。
この時は月足RSIも40まで下げ切らず、PBRも1.2割れ程度(=今の水準と近い)で切り返し、一段高となった。
これは民主党時代の底練り期間からのレンジ上抜けという非常に強い上昇圧力があったためと考えられ、現況、すでに
日経月足RSIは42台まで低下しておりこのパターンで終わる可能性はほぼなくなったとみてよいのではないかと考えている。
日足や週足のそれはともかく、月足のRSIはそれなりに信用性があり元々シクリカル的でレンジ上下を繰り返す日本株においては猶更と考えている。今回も月足RSI80越え(=昨年)で売っておけば結果的には良かったですねということになっている。
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一方TOPIXは上図の通り相対的に下げが不足しており、良く言えば耐えている。ただ、これもかねてから何度も言及しているが、マザーズを先頭に日経、TOPIXと続いているだけにも見え、いずれ日経の軌道をトレースすることになるのではないかと考えている。日経がマザーズの軌道になるかはさすがにBPSの支えがあるので微妙だが、既に日経月足はボリバンがエクスパンドしながらのバンドウォークという状態でありこれはマザーズの昨年12月あたり=下げの初期とよく似ている。
既に日経は週足Wトップのネックラインを割っており、ワクチン相場で駆け上がった24000-26000間は出来高の少ない真空地帯となっている。素直に見ればいずれ24000(=従前2018年~2020年レンジ上限でもある)、そしてPBR1水準=22000台へのオーバーシュートで一旦の調整を完了するというのが「緩和時代」の素直な中規模調整である。
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さて、ついこの間まで足元の相場は2018年10月~12月にかけてのブラッククリスマス相場に似ているとして、週足チャートを重ねる解説がネット上でもよくみられていた。私自身、展開が非常によく似ていると感じていたが、ここに来てウクライナ危機という新たなファクターが資源価格の暴騰を産み、リーマンショック前の2008年相場を重ねる声まで出てきた。
日経新聞にもこのような記事が出ている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL03H15_T00C22A3000000/
日経の月足で見ると、現在が08年の2月~3月程度に相当するという。上図四角で囲ってみたが、確かにコロナバブルのWトップと似たようには見える。もっとも、チャートなどどこも類似性がありそういう目で見ればそう見えてくるだけ、でもあるのだが、足元の資源価格の噴き上げは当時との類似性を高めているのは間違いない。

上図はWTI原油のチャートであるが、仮に08年2~3月が今だとすると、原油はそこから更に最後の噴き上げに向かう。
株は3月に一旦底打ちし6月に月足MAまでリバウンドする。原油は7月に天井を付けそこからは原油と株がほぼ一緒に暴落に向かう。
原油がここからさらに噴き上げると史上最高値も見えてくるが、一方で2020年のマイナスからの上昇幅、率は08年どころではないレベルでもあり、今が天井であってもおかしくない。だが、外部環境は一段高を暗示しており結局は「分からない」。
0.25利上げにトーンダウンしたFRBの姿勢は足元の資源価格暴騰の一因であると私は思っているが、あまり指摘する人はいない。そもそも00年代以降の資源価格の各種チャートを見ればわかるがこれだけの振れ幅は実需だけで説明できるものではない。各種コモディティ連動の金融商品の増加、低金利緩和マネーの流入が明らかにその振れ幅を増幅している。このことを無視して実需要因だけで語ろうとするから説明が苦しくなる。
ロシアへの制裁強化とタイミングが同じだったからそちらを見たいと思うのは分かるが、0.25利上げで米株が「安堵の上げ」を下と同時に原油が噴き上げたのは、商品市場が中銀の尻込みを見切ったといってよいと思う。引き締めをしたからと言って原油が湧いてくるわけではない、サプライチェーンが整うわけではない、と緩和を擁護する金融界隈には、何を言っても無駄だろうが…。

上図小麦は足元既に史上最高値となっている。またチャートは省くがパーム油も異次元の高さで史上最高値である。
これらは08年はどうだったかというと2~3月、株が一旦沈んでた時に天井を付けている。コーンは原油と同じ7月あたりが天井となっていた。
普通であればコストプッシュでもっと食品株が売られてもおかしくないと身構えているが、意外と足元は耐えている。
ちなみに08年の2~3月といえば乳業二社は一足先に暴落しリーマン底と変わらないレベルまで下げていた。私はリアルタイムでは知らないのでよくわからないが、この辺の商品高が影響していたのだろうか。だとすると足元の食品株は既に相当下げ切っているという好意的解釈をしたくなるが、バリュエーションや年足を見る限りあまりそうは思えない。
いずれにせよ、ここから先はどの道もいばらの道である。
資源高からのリセッションを懸念して再度緩和に走るというサル並みの馬鹿げた行動を中銀がもしとればインフレの暴走は不可避でそれこそ70-80年代相場の再来となろう。
一方中銀が引き締めをしっかりすれば株式全体の中規模調整は不可避である。そこに(売り方にとっての)追風が吹けばリーマンやコロナショック級の日経PBR0.8水準=暴落ということになろう。
バリュー株は依然昨年安値を割っていないものも多いが、既に年安からの距離は10%未満に押し込まれているものが多い。中規模調整であれば一部の銘柄は耐え抜くかもしれないが、普通で行けば同水準で2番底か1割ほど割れこむか、といったところだろうか。
また、最近は月後半、24日付近に米株の調整局面が多いが、もしかすると権利取り前にお得なセールが来るのかもしれない。少なくとも、昨年のようなバリュー・アフコロ相場はよほどのウクライナ危機での進展によるショートカバーが起きない限りは難しいだろう(というか既に3月のこの時点でシクリカルの殆どは年初の上げを消しており、上げたとしても直近高値程度だろう)。
以前の記事にも書いたが、イールドカーブがフラット化している状況でシクリカルを買うのはリスキーであり、今回も1月年初と2月の決算でシクリカルは謎上げをしたが足元全戻しどころか年初来マイナスのものも多い。短期決戦で利確できた人には脱帽だが、私にはそのような腕は無いのでFOMOに惑わされずシクリカルはスルーしディフェンシブに徹しておいたのは良かったと考えている。もっとも、そのディフェンシブも今後は資源暴騰で厳しくなろうが。
先の原油と小麦のチャートを見直してもらっても分かるが、実は2013辺りまでは資源価格は相当に高い位置にあった。原油も100ドルが当たり前にあった時代だ。一方で2015以降は総じて資源価格がデフレ状態で低い位置にある。例えば化学や素材など、原油価格に影響を受けやすいモノはそもそもこの足元の資源価格が「定着」するとなるとヒストリカルバリュエーションが機能しなくなる恐れがある。食品についても、以前書いたように資源価格が下げ始めてからバブったわけでそれまではアベノミクスにも乗れず低迷していた。資源高が定着すればパラダイムが転換することになり、過去5年の資源デフレ時代のバリュエーションは意味をなさなくなる。さらにインフレの出現で緩和時代が終焉を迎えざるを得なくなると、高PBR、PER株のヒストリカルバリュエーションは猶更意味を持たなくなる。
例えば花王などは本来足元のような相場乱調時には耐えやすい銘柄のはずが、①緩和の終焉懸念 ②原油はじめ資源高 ③インバウンド終焉 という3つの大きな背景要因の転換があるがために苦戦を強いられている(無論信用買いが増えて需給の問題もあるが)。こういう銘柄は結構あるが、チャートを見るときは最低10年、できればそれ以上見て異なる時代背景下でのバリュエーションをしっかり検討し、特に先行き不安定な現状ではPBR1越え銘柄は避けたいところだ。
一方で上図実質金利は資源価格暴騰によるBEIの上昇とリスクオフの債券買いによる長期金利下落から再度-0.8台まで低下しており、これが足元のグロースのリバウンドにもつながっていた。もっとも、こういった消極的な、消去法的な買いは長くは続かないとみるのが自然であるので私はグロースはスルーするが、一方でこの実質金利のままでは大きな調整は難しい。実際のところ、現在のコモディティは投機資金の流入に支えられたリスク資産であり、08年同様株と一緒に下がる可能性は高くそうなればBEI低下からの再度実質金利は上昇の形となろうが、ウクライナ問題は依然あまりに流動的であり先行きは不透明なままである。
目先の話でいえば米株は2018年コースだと週足MAまでの反発が想定され、当面は吹けば売り、突っ込めば買いで短期トレードをするのがベストに見えるが、腕に自信のない私のような人は何もせず中規模調整レベルを待つほうが良いかもしれない。