SP500は綺麗に13週移動平均付近まで反発した。

いつのまにか2008年コース説が台頭し忘れられかけていた2018年10~12月コース通りの展開となっている(今のところは)。ここを超えてくるようだと月足Wトップ形成に向かう可能性を意識しないといけなくなる。

足元、まるでロシアが全面降伏でもしたかのような戻しであるが、これで実際停戦や終戦になればどうなるのか実に興味深い。案外出尽くしで下がったりするのかもしれないが。

米株版MSQや各種オシレーター的指標が短期的には陰の極に達していたことなどが指摘されているが、多くの売り方は先週末で撤退したのではないだろうか。そういう意味では、買戻し圧力もある程度一巡したと考えるべきかもしれない。

さて上図は10年マイナス2年の長短金利差であるが、既に10年-5年については逆イールドになっているがこちらもかなり際どいところまで来ている。逆イールドについては景気後退の先行指標としてしばしば言及されるが、同時にこれ即ち暴落ではなく一定のタイムラグがあるという解説もよく聞く。

実際リーマンショック前などはそうなのだが、一方でITバブル期の二度目の逆イールドは即ITバブルの天井となっている。

今回も2019年夏の逆イールドに対するアンサーがコロナショックであるとしても、必ずしも油断すべきところではないと思う。(個人的にはこの言説自体あまり信用していないのだが)

金融界隈は難しい理論も多く、素人にとっては極めてとっつきにくい世界である。

一方で、何事にも言えることだが案外門外漢がシンプルに考えたほうが真理を突いているということもある。

子供が普通に考えたところで、これだけのバラマキをしておいてインフレにならないほうがおかしかった。

同様におかしいのは、2年前からずっと言い続けているが、人工的な1か月ほどのロックダウンをリセッションとして景気の大底扱いにし、また10年の景気拡大が続くとしている(していた)金融メディアの解説であった。

 

閑話休題、大量絶滅というワードを聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれない。

生物多様性は一定の繁栄の後その多くを失うほどの衰退があり、それを繰り返している。

私はこれは実体経済や相場にも通じる話だと思っていて、例えば企業間の競争は生物種間の競争によく似ている。ニッチという言葉は元々生物学で使われている言葉だ。ある種がいなくなることでそこに隙間が生まれ、新しい種が入り込む余地が生まれる。企業でも、不況期は大企業が倒産したりするがそこを埋めるのは新たなベンチャー、未来の大企業であったりする。酷な話だが相場も同じで、誰かがぶん投げて退場したところに新たなバーゲンハンターが入ってくる。

コロナ禍ではその実体経済への影響のわりに倒産件数がかなり少ない(今のところは)。これは言うまでもなく国が補助金やら融資やらで保護しているからであるが、元々生産性の低かった、本来なら倒れるべき企業までも保護され延命されている。(更に過激派の人ならこれを人間そのものにも当てはめるだろうが、私はそこまで炎上を欲してはいない)。

国がゾンビ企業もまるごと保護にまい進する姿は、目先のリセッションを避けたいがために将来のより大きなリセッションを育んでいるようにしか見えない。生物の保護でも特定の種だけ(可愛がって)保護する運動が良い結果をもたらしたことは一度もない。守るべきは生態系全体、環境そのものであって特定の種ではない。経済も同じで、守るべきは健全な資本主義そのものであって特定の業界や企業ではないと思う。

延命に延命を重ねてきた緩和相場、普通で考えれば大絶滅を経ないことには次に進めないと思うのだが、人生50年が100年になったように、何が起こるかは誰にもわからない。

さて、話を目先の相場に戻すと、足元指数のリバウンドに伴い食品などディフェンシブは相対的に苦戦を強いられている。逆行安とまでは行っていないが、指数の数分の一の上げで終わることが多い。

食品株については短期的にはグロース、半導体の裏側として捉えられているように感じる。中長期では資源高が資源安に転じた時に本格的な噴き上げが期待できるのは過去にも書いた通りだが、資源価格が懸念されているのならばつい先日の資源高の時化学や素材のように暴落しなければいけなかったし、足元資源価格が落ち着いているのだからこれまた化学や素材のように大きなリバウンドを見せなければいけなかった。

しかし現実には多くの食品株は大して上がりも下がりもしていない。つまり指数が下げるときは避難先として買われ、指数が上げるときには相対的に売られており結果として動いていない。

実際、PFの半分以上を食品株で占めている私のパフォーマンスが、年初来でずっとややプラス~微マイナスの間をうろうろしてほとんど変化がない。

昨年11月はバリューにとって暗黒の11月だったが、あの時はコストプッシュを理由として食品はじめ多くのバリューが売られた。にもかかわらず足元では当時を遥かに超える資源高なのに当時の安値を割っていない食品株も多い。11月の下げですべてを織り込んだとは考えにくい。理由は、指標面でそこまで下げていなかったものが多いこと、資源価格の暴騰ぶりがどう考えても当時想像できたレベルを超えていることだ。例えば同様に資源価格が噴いた2008年前半は、それに呼応して下げているところが多かった。

結局のところ、半導体の裏側として上げ下げしている可能性が最も高いのではないか。実際、昨年11月は半導体の噴き上げがあった月である。そういう意味では、以前書いたITバブル期のバリュー逆行高現象が起こっている可能性は依然残されている。ただ、このまま中規模調整で終われば昨年11月が大底になるかもしれないが、日経PBR0.8クラスの大規模調整となると無傷では済まされないだろう。

2008年のリーマンショック前、バリュー・バブルの終盤はディフェンシブ系が相対的に強かったことが知られている。資源価格が下落に転じていたこともあろうが、相場の変調が浸透していくとこういう系統に資金が入るのは想像に難くない。今回もこのパターンになる可能性もあろうが、いずれにせよ大規模調整の前では無力なのでそれまでの短中期トレードということになろう。

米株指数が月足で2つ目の山を付けに行くとしても、不透明感は残りつつの延命という形からディフェンシブに資金が入る可能性はそれなりにあると考えている。どう考えても来期決算予想は各社とも慎重にならざるを得ず、本格的な資源安からの業績改善に伴う上昇相場はクラッシュの後であると考えるのが自然だが、避難先としての買われ方であれ何であれ買われれば正義であり、個人的には引き続きPFサイズは小さく、ディフェンシブ中心で行きたいと思う。

なお、本来こういった相場では買われやすいはずの花王などの日用品セクターが足元非常に弱い状況が続いている。原油高などの影響もあろうがやはりそのバリュエーションに問題が残り、何度も書いているが高PBR銘柄は当面厳しい展開を想定すべきだと思う。資源価格についてはクラッシュを経たとしても数年単位では高騰が続くパターンも要想定であり、ここ5~6年の資源安時代のバリュエーション尺度で全てを見るのは危険だろう。

 

 

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