ここ最近、日経やTOPIXの相対的な耐え方が際立っている。

昨日はSP500も3月安値にほぼ合わせてくるほどの下落となったが、日経先物の反応は鈍い。

上図日経の円建てとドル建てチャートを並べてみたが、3月以降円建てでやけに耐えているように見えてドル建てではすでに3月安値を割っているどころか月足で見ても2020年7月末の水準であり、当時の日経円建ては22000割れであった。

つまり最近の日経はドル建てで見れば耐えているどころかむしろ一際下落しているのだが、円建てで見ている我々には耐えているように見えているだけである。

ところで、円安によりEPSやBPSもドル建てで下がるのではないかという考えもできるが、いわゆる指数寄与度の高い製造業は海外売上比率や海外資産率が高く、これらのEPSやBPSはドル建てでも変わりにくいであろうことから、あくまで指数レベルで見ればやはり円安による円建てでの指数押し上げ効果は一定あるものと思われる。

もっとも、単純な為替差益や為替換算調整勘定でのプラス面にそこまで大きな意味があるとは思えない。無限に円安が続くというのならまだしも、一旦逆回転が生じれば全て帳消しになるだけであるからだ。そもそも為替に助けられた増益が、企業の本質的な成長を意味するのかと言われれば明らかに否であり、単なる外部環境のブレに過ぎない。

そもそも、ドルにしろユーロにしろ、先進国通貨の抱えている問題はどこも大差はない。異次元緩和、巨額債務、中銀BSやM2の膨張、どれも通貨価値の維持に疑問を生じさせる要素ばかりであり、そういった意味でどこの通貨も目糞鼻糞の戦いに過ぎない。

私はFXなどはやったことがないが、そういった意味で今買われているドルを見て、ドルに換えれば安全、といったような感覚は全く持たないどころか、今は日本円が先頭を走っているだけでそれをユーロにしようがドルにしようが結末は大差ないように思える。

即ち、先進諸国の通貨価値が守られるのか守られないかの二択であって、どこの通貨なら安全か、といった問題ではないと思える。

過去の記事にも何度も書いているように、どの国もコロナ以降のバラマキは明らかに度を越しており通貨価値の毀損を回避できるかかなり怪しいし、そもそも巨額債務の処理方法として通貨価値の毀損をむしろ誘導することも考えられる。

70年代や80年代の米国株式の死は、確かに過度なインフレ、スタグフレーションとともにあったがゆえに今後通貨価値下落のリスクヘッジとして株式が機能するかは不透明だが、某氏が現金はゴミというたびにキャッシュイズキングの暴落が来たここ10年ほどのパラダイムも、いつまで変わらずにいられるかは同様に不透明だろう。

個人的には、足元の日経の円建てでの耐え方は文字通り通貨価値の下落による現物資産の名目上の上昇そのものであるし、このようなことが米株や欧州株にも波及し過去20年のデフレ的クラッシュに慣れ親しんだ現在の市場参加者が想像困難なインフレ的クラッシュにつながる可能性も、高くはないものの一定考慮すべき段階に来ているように思う。

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