

強烈な円安が始まってもう半年になろうとしているが、なかなか収まる気配がない。
上図の通りドル建て日経と円建て日経のワニ口は開いたままである。
前回も書いた通り、米株がリスクオフになるのは米金利が上昇したときでこれが円安の下駄を生み出し、
金利が下がるとリスクオンで円高を相殺してしまう。
結果、先日のように米株が600ドル下げても日経は300円ほどしか下がらない。
日経空売り勢には頭の痛い話だろう。
さて、大緩和時代のデフレパラダイムに慣れ親しんだ人であれば、おそらくもうドル高も終わりだろうと円高に備えたPFを組んでいる人が多いのではないだろうか。
かくいう私も確かにそちらよりではあるが、こうも70~80年代との類似が多くなると、そして誰もが昨年のパウエルのように「インフレは一時的」「インフレはピークを打った」と決め打ちしているところを見ると、どうにもホンマカイナと首をかしげてしまう。
確かに人口が減少に転じつつある現在、当時のようなインフレ圧力はない一方、通貨価値の下落要素は金兌換制の廃止に勝るとも劣らない状況である。コロナ以降のロックダウンとバラマキという世紀の愚策は、確実に世界史の教科書に載るだろう。現在のリスク資産バブルも後世ではチューリップバブルと並び称されていることだろう。
70年代~80年代、利上げとともにインフレ下のドル高が見られたことは有名である。これが新興国の通貨なら普通にインフレ=通貨価値下落で紙くずになっていたのであろうが、基軸通貨の場合はとりわけ諸外国からの金利を求めての資金流入が為替相場での通貨高を生み出しやすい。これはまさに現在のドル高と構図は同じである。
米国のインフレがすぐには収まらないという仮定を信じるのであればドル高が続き日経の下駄も簡単には脱げないという招かれざる結論に達し、業績面では円高メリット銘柄の低迷を支持することになる。思えばドル建て日経と円建て日経の開いたワニ口は民主党政権時代の円高下でも見られ、数年開いたままであった。
指数の位置からして現在のドル建てと円建ての乖離は円建てが下がることで是正されるであろうという考えに変わりはないものの、この乖離は存外長く続くリスクがあるのかもしれない。特に、70年代同様、少しでもインフレ鈍化がみられると隙あらば緩和を再開しようとしているのが見え見えのFEDでは、当時と同じコースをたどってもおかしくない。しかも当時は人口増加による正の(ディマンドプル)要素があったものの、今回は負の要素しかない正真正銘の通貨価値の下落に終わる可能性もあろう。
100年後の教科書に、この大緩和バブルと集大成としてのコロナバラマキはどんな描写がされているのだろうか。