SVBやクレディスイスの危機を受け、直近の動向と今後の見通しについて考えていることを今回も要点だけ簡潔にまとめたい。
・インフレ継続か大クラッシュかの2者択一という基本路線は全く不変。
→指数レベルでは何ほども下げていない中で早々に中銀が銀行救済に動いており、緩和麻薬の催促相場の様相
→選挙前に大クラッシュは何が何でも避けたいという票集め論理も喧伝されるが、一方で票の数では圧倒的に多い低所得者層にとってはインフレや富裕層へのルサンチマンのほうが問題であり、無視できないという考え方も。
→結果的に中途半端な緩和転換と再利上げ=中途半端な下げと戻しの継続が続く公算大
・GFC再来を見込むその考え方自体が大緩和時代のパラダイムに染まっていないか
→GFC前の2007年頃からの様相に酷似しているという現在のコンセンサス
→例えば10年-2年の逆イールド解消から1~2年で暴落が来るなどという「経験則」が流行中
→一方で例えば80年代は下図の通り逆イールド解消後に株価は素直に上昇。(82年7月~)
→インフレ相場パラダイムでは大緩和時代の法則は通用しない。今がどちらのパラダイムにあるのかは両方考えておく必要。

・中銀が信頼されているうちは本当の暴落ではない
→今回の銀行破綻劇でも中銀による流動性供給が素直に好反応されているがこれであるうちは本当の下げではないのでは。
→積み上がった政府債務や中銀のBSに市場が懸念を持つ時が本当の下げになる
→英国のトリプル安はその予行演習だったのでは
・中銀が信頼されなくなった時、クラッシュは暴落か暴騰か?
→慣れ親しんだデフレクラッシュは結局のところ通貨価値の信認の上に成り立っている
→であるならばインフレ的クラッシュとしての株を含めた実物資産の暴騰も考慮すべき
→暗号資産は現状ナスなどとリンクしているが、インフレ的クラッシュ下ではむしろ安全資産として買われる可能性
(とはいえ私自身は買うつもりはないが)
・政府はどちらのクラッシュを望んでいるか?
→膨れ上がった政府債務の帳消しにはインフレ的クラッシュは好都合だが通貨価値の信認とは国家の信認でもある
→債務は帳消しにしたいが通貨価値の暴落は避けたいという二律背反
→そもそもインフレ的クラッシュ=ハイパーインフレなので金利も暴騰し利払い金負担で債務の目減りが帳消しになる可能性
→膨れ上がった債務をニューノーマルとして市場に認知させながら通貨価値を維持するのがベストシナリオだろうが、可能かどうか。
・それでも緩和やバラマキは麻薬なので先進国家が本当のハイパーインフレに至るまで(ないしその兆候=中銀、通貨の信認が揺らぐまで)これらは繰り返されるだろう
→次の不況でもほぼ間違いなく現金はばら撒かれ、しかもより浅い不況で民衆はすぐにそれを求めるだろう
→ちょっとの不況=株の下げですぐに緩和→再上昇するもインフレがすぐ再燃し再度引き締め下落、この波を繰り返し年単位で見ればダウントレンドの継続、というのが当面のメインシナリオか。
→次のインフレの波で今回を超えるインフレになれば要注意。さすがにそのレベルだと低所得者層を中心とした票集めに大きな影響があるので政府もデフレクラッシュを選択する可能性。逆から言えばそこまでのインフレにならない限りは延々と緩和麻薬の注入があるだろうので中規模調整程度でも相応の買い場なのではないだろうか。(中銀が信頼されている限りは、という条件付きで)