企業分析、銘柄選択

私の銘柄選択、企業分析(というほど大したものではないが)の方法について、あくまで現時点での考え方を記しておきたいと思う。

自分は割安株を逆張りで買う手法なので、基本的に素晴らしい業績のキラキラ銘柄を買うことはない。
世の中には色々な企業価値の分析方法があり、私もよく理解できていないような横文字の指標を用いて企業の価値や成長性を計測する凄い方々がたくさんいる。

一方、私が見ているのは、PBR、PER、ROA、ROE、自己資本比率、EV/EBITDA倍率、純有利子負債といった程度であり、これは例えばマネックスの銘柄スカウターなどでは容易に一覧表示されるレベルのものだ。株を始めたての人でもこの程度は誰でも見ているだろう。

あとは、短信に記載されている財務三表。これは端から端まで読む。以上である。

いわゆるグロース系の株を扱う人は、もっと様々な指標で成長性や将来の企業価値を計測するようだ。
一方、私が扱うような株は何らかの理由で売り込まれたいわば訳アリ品であり、グロース系の指標を用いても悲惨な通信簿が出来上がるだけであることが多い。

世の中には凄い成長率の企業があり、そんな企業はあらゆる指標が素晴らしい数字を指し示している。
私の扱う企業ではまずお目にかかれないROAが2桁とか、ザラである。
業績で見ても、例えば直近では半導体関連などは確かに良い成長を示している。これを以てして半導体株を買い煽る証券会社やメディアも多い。

しかし、例えば軽自動車に乗っているあなたが「あっちのフェラーリのほうが良いクルマですよ」と言われたとして、じゃあ買い換えますと言うだろうか?
フェラーリは軽自動車の何倍、何十倍もするわけだから良いに決まっている。当たり前の話である。なのに株の話になると、株価という価格を忘れて業績やファンダメンタルズの良し悪しだけで話を進める人が多い。全く馬鹿げた話だと思う。

ネットが発達しあらゆる企業の成長率や利益率が瞬時に比較でき、どんな初心者でも容易にどの企業が素晴らしい成長企業か分かる時代、フェラーリのような株は既に相応、いや相応を遥かに超えたような価格がついているのが常である(ましてやこの緩和バブルでその傾向は一層顕著だ)。

フェラーリを高値で買うのではなく将来フェラーリに化けるタマゴを探し出すのが真のグロース投資という人もいるだろう。ごもっともである。すでに人気化したグロース株に上髭で買いを入れるのはただの愚かなイナゴであった。しかし、残念ながら、私には流行のテンバガーとやらになるまで待つほど気が長くもないし老い先も長くない。さらに言えば、タマゴは往々にして腐りやすく、ハズレを引いてしまえば投下資金が消えてなくなることもあるだろう。加えて、私は投下資金が低確率で10倍になるよりも高確率で倍になるほうがよほど好ましいと思っている。

グロース株を支えるのは成長率である。だからグロース株のホルダーは月次や四半期決算に一喜一憂し、少しでも成長鈍化の兆しが見られればすぐに逃げないといけない。利益や成長率はミズモノであり、容易にいくらでも変わり得る。この支えがなくなれば、財務面では相当割高になっているのがグロースの常だから、下値余地は実質無限にある。

私が買うような割安バリュー株というのは、そもそも成長などほとんど期待されていなくて、PBRが1を割れている、額面通りだと解散したほうがましという株である。支えは純資産であって、成長率や利益率ではない。純資産はたこ足配当でなく赤字を出さない限り減ることはない(無論有価証券の値下がりやのれんの減損などはあり得るが)。要するに、支えが利益や成長率のようにミズモノではなく比較的安定しているので、さほど月次や四半期決算に一喜一憂する必要がない。更に、中~大型株であればグロースの卵のように腐ってしまう可能性も低い。

私は物販を長くやってきたので、株を買うのも商品を仕入れるのと同じだと考えている。たとえば、リサイクル店の店主として、考えてみる。

売り手が新品未使用の保証書付きの商品を持ち込んできた。当然相手は強気である。商品には全く傷もなく、瑕疵が無いからだ。これをデパートで売っているような定価で買い取っていては、全く利益は出ないだろう。キラキラのグロース株を高値で買うとはこういうことだ。

逆に傷物の商品は、持ち込んできた相手にとっても弱みがあるのでこちらが安く買い叩ける。もちろん、その傷の吟味は重要だ。商品の動作に影響する致命的なものなのか、それとも売り手には無理でも自分ならリペアできるようなものなのか。後者のようなものを仕入れれば最も利益を出せるのは、想像に難くない。

株は自分でリペアすることはできないしする必要もない。リペアするのは企業自身である。つまりリペアできる力のある企業かどうかを見極めることだけが必要になる。これは、もちろん財務基盤などである程度の支えを数値化できる部分はあろうが、そうでない部分も多い。全てが数値化できるのであれば、そもそもこのネット時代においてすべての投資家が同様にその情報を得られるのであるから、そこにプレミアムは発生しない。

結局のところ、様々な指標を用いた分析は重要である一方、そうした数値化された情報は昔と違ってもはや誰もが平等にアクセスできる状況であり、既に価格に織り込まれていると思われる。逆に数値化できない部分の目利きこそが利益の源泉であり、もっと言えばそこにしか利益は生まれえないということだと思う。

グロース株でいえば、先の「タマゴ」を目利きする力がそれであった。私のような割安バリューでは、キズモノが復活するかしないかを判断する力がそれである。私がなぜ前者ではなく後者を選ぶのか、それは、純資産という比較的変動しにくい支えがあること、時価総額、企業規模が大きく完全に腐る可能性が低いこと、全くのゼロから1に進むよりも、10から5に転落したのち10に復活するほうが容易と(少なくとも私には)思えるからである。

企業を指標面だけで分析すると、おかしな株価に出会うことがよくある。今や多くの「理論株価」が様々なサイトで掲載されているが、その通りになっている方が珍しいだろう。

株は美人投票だとよく言われる。例えば業績がどうであれ、何らかの理由で「人気」があれば株価は上がる。優待であれ、企業イメージであれ、理由は何でもよい。最終的には需給で株価は決まるので、PERが15を超えたらいけないとか、そんな決まりはどこにもない。

思うに、株価というのは業績や財務面など数値化できる指標から成るコアな部分に、人間が別途評価を加える曖昧な部分が加算、または引き算されたものである。

例えばハニーズはアダストリアより指標面だけ見ればどう見ても割安だが、それは過去を遡ってもずっと同じ傾向である。これには色々な要素があろう。ピーク時の利益率の差、企業規模、いろいろあろうが、身も蓋もないことを言ってしまえば、結局はその企業の人気の違いといってしまったほうがよほどしっくりくる。企業間の比較は大切だが、一方で、企業にはそれぞれ個別の平均PERやPBRがある。ずっと割高に買われている銘柄もあれば、その逆もある。それは隠れた業績面や成長面で説明できるかもしれないし、そうしようとする人も多いだろうが、結局のところ、その企業の人気の違いといったほうがよほど合理的に思えることが多い。

私はBtoBの銘柄よりもBtoCの銘柄を好むのだが、これはまさに、この「企業の人気度」を理解しやすいからである。人気なのかどうか、人気が出そうか、といった数字にならない部分、これは感性の問題だ。ずっと物販をやってきたこともあって、BtoCのほうがなじみがあるし、その企業のセンスというのが分かりやすい。

色々な指標を用いて企業分析するのは素晴らしいし、その道の達人には数字が苦手な私には到底なれるとは思えない。一方で、数字に出てこない企業の人気やセンスを理解することの重要性は、あまり指摘されない一方で案外重要ではないかと時を経るにつれてますます感じている。

テクニカル分析でもそうだが、多すぎる指標を用いると時に指標同士が相反し混乱するだけの結果になることが多いと思う。それよりも私のような初心者は基本的な指標をまずはしっかり見て、その上で実際PFに加える場合は決算ごとに財務三表を読み込む、という流れでそこまで問題が生じるようには思えない。ある程度好財務でBPSが着実に増加している東1銘柄であればいきなり債務超過に転落するようなハズレを引くことは、そうそうないと思う。もっとも、今回のコロナ禍におけるアフコロ株のように事業環境が激変した際はまた別の話だが。

ところで先のリサイクル店の話に戻るが、実は最も簡単に儲かるパターンというのがあり、それは売り手が何らかの事情ですぐカネが必要なために新品未使用の商品を安値でもいいから買い取ってくれと言ってくるときである。これは、相場でいえば信用収縮からの暴落に他ならない。私はずっとこれを待っている。

 

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